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2012-10-11

鬼姫~忌子乃姫君~(肆)

こんばんわ。ナリです。BGMはリジッドパラダイスです。芳香可愛いよ芳香。

さて、本気でケリを付けなきゃいけない短編その一である鬼姫の続きです。
二年ぶり、か(遠い目)

では、どうぞ!
亥の刻(午後十時頃)。
輝姫は薄い布団に包まって天井を眺めていた。
(父は何故あって私を納屋に閉じ込めたか)
いつも己が心に問うのはその事だ。己が知らぬ所で何ぞあったは事実なれど、父は其れを一向に話さなかった。
(何時ぞやは私を守る為、と言うておったが)
父が思わず漏らした言葉。守る為とは何から私を守るのか? その答えは永久に出ないだろうが、
(無意味な事、か)
ふぅ、とため息をついて輝姫は目を閉じた。その内眠りにつくであろう。そしてあすもまた同じ日が続くのだ。


……音がする。慌しい足音。輝姫は目を開けた。外だ。荒い息遣いも聞こえる。
「父上、ですか?」
返事代わりに納屋の戸が開いた。為介だ。だが、何処か様子がおかしい。
「逃げよ、輝姫」
「逃げる?」
為介を見上げる。暗くてよく見えないが、何か液状の物が為介の腹から流れているのか、床に雨音の様なそれが響く。
「そうだ、父は最早長くは無い。裏戸から逃げるのだ。走れ、決して止まるな。良いな?」
目は血走り、息は先程よりも荒くなっている。その姿が悪鬼に思えて、輝姫は震えながら何度も頷いた。
「よし、行け!」
為介が言ったと同時に裏戸を開け、輝姫は暗闇の中を駆けた。


***


獣道を辿り、木々を掻き別け、道無き道を走り続けた。
何から逃げているのか。何に追われているのか。何も分からぬまま、輝姫は走っていた。
「もう、良い、だろう」
大木に寄り掛かり息を整える。納屋から外に出たのも、これほどまでに走ったのも初めての経験であった。
と、声がした。がさがさ、と茂みを掻き別ける音も聞こえる。危険な気がして辺りを見回す。隠れられそうな場所は無い。あるとすれば
「この上、か」
大木を見上げる。登れるのか不安だが、此処しか無いならば致し方あるまい。
輝姫は手に息を吹きかけ、木に手をかけた。
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鬼夜蛇神ナリ

Author:鬼夜蛇神ナリ
キヤタガミと読みます。悪堕ちと百合を愛する地球内腐的生命体です。

一応18禁ちっく(?)な作品がちらほらあるので、覚悟の上でお読みください。

基本的にリンクフリーですが、ご一報くださると幸いです。

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